言の葉の火葬場

心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく、書いて、吐いて、そうしてどこにもいけない、言葉達をせめて送ってあげたい。そんな火葬場。

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

蜂蜜とドーナツ

蜂蜜を頂戴。 ドーナツにかけるの。 キスして頂戴。 ドーナツのあなの中、甘い秘蜜で一杯にしたいの。 そうしたらね、お礼に、蜂蜜のかかったドーナツをあげるわ。

ライラック

愛する者を失うのが、これほど恐ろしいものであると、実感できたのは、あの、汽車の中だった。 君との友情が、本当にこのまま、永遠に失われてしまうとしたら、そう考えると、パイプをくわえた口が、パイプを持つ手がぶるぶると震えた。 私は私の怠惰を呪っ…

嫌いなものと好きなもの

あたし以外の誰かに向ける、あなたの微笑みが嫌い。 あたし以外の誰かに向ける、あなたの優しさが嫌い。 あたしじゃないあの子に向ける、あなたの好意が嫌い。 あなたがあたしに向ける、好きという言葉が一番嫌い。 そうして、あなたを大嫌いなあたしがあた…

銀木犀

ねぇ、とあなたが私に声をかける。金木犀の甘い香りがするわねと、嬉しそうにあなたが言うので、金木犀は銀木犀の突然変異種なのだと私はあなたに教える。 少しの沈黙の後、甘く涼やかな風がざあっと吹く。 香りも色も違うけれど、元は同じ花なのね、なんだ…