言の葉の火葬場

心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく、書いて、吐いて、そうしてどこにもいけない、言葉達をせめて送ってあげたい。そんな火葬場。

ちらし寿司

朝起きると、泣いていた。

きっと、昨日街で見かけた、可愛らしいカップルのせいだ。

女性の手を一生懸命握って、にこにこしている男の子。

女性の方もなんだか、誇らしげな顔をしていた。

 

私は祖母を亡くして随分と時間が経った。

成人した姿を貴女に見せることができなくて、悔しかったという気持ちが、ふと、線香の香りのように微かに思い出されて、不意に涙が出そうになることが、まだ、ある。

ああ、そうだ、今日の夕飯は、スーパーでちらし寿司を買って帰ろう、そう心に決めて私はネクタイを締めた。