言の葉の火葬場

心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく、書いて、吐いて、そうしてどこにもいけない、言葉達をせめて送ってあげたい。そんな火葬場。

終世記

第一日

彼がやってくる。

死の病原を撒き散らしながら。

第二日

彼が街を蹂躙していく。

たくさんの死体と瓦礫と孤独を生み出して。

第三日

彼が全てを焼き尽くす。

死体も瓦礫も孤独も、そして悲しみさえも、その一片も残さず、灰すら残らない。

第四日

悲しみを失った世界に彼は立つ。

大地の砂と同じだけあった悲しみはどこにもない。

第五日

彼は世界を見渡す。

世界には意味のあるものは何もなく、光と、大地と、海と、空とが、ただ彼のためにある。

第六日

彼は咆哮をあげる。

答えるものはおらず、大地も、海も、空も、もはや必要とされない。

第七日

彼は静かに目を閉じる。

そうして世界は光を失った。